ガールズバーの余韻
お前にはこの世界に水が合ってる。
だからどんなに奴を引き留めたって、住む世界が違いすぎる。だって奴はいつものお前の手になんて乗りゃしねえに決まってるからさ。ブランドで釣ろうなんてさ。
だからお前には俺が似合いなのさ。柄にもなく薄化粧に仄かな香水なんてさ。女子大生でもあるまいに。
クラブの水は、今風のガールズバーじゃ、直ぐに物足りなくなるさ。
お前の身体は、俺仕込みだからさ。
それでもお前は行こうとする。
そうか、もうここらが潮時ってか?
お前は女に固有の百の顔を使い分けてきて、その手では奴は引くだけさ。
行くんだな。
分かったぜ。もう引き留めはしないよ。
そう言ってやって振り返って見せた笑顔があんなにいじらしく可愛げだったのに、俺は却って恐れ入ったよ。だからもう、引き留めはしない。
でもたまには、そう奴に相手にされず悔しかったり、金がいよいよなくなっちまったら、又前みたいに俺に頼って連絡してこいよ。
俺の方は、お前がそうじゃなくたって、いつだって待ってるんだからよ。
じゃあ、あばよ。或いはこれが最期で、次はあの世かもしんねえけど、まあいいってことよ。
お互い知らねえ仲でもねえんだからよ。
2022年 9月9日
(十一年前の君へ)
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